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TSKニュース&トピックス

平成22年3月号

事業再生に係るDESの研究会報告書について

税理士 齋藤

平成22年1月14日に経済産業省の事業再生に係るDES研究会から、『事業再生に係るDES研究会報告書』が公表されています。これは企業再生税制の適用対象となる一定の私的整理でDESを利用する場合において、税務上の債権の「時価」について検討をしたものですが、この債権の「時価」については実務上その具体的評価方法が不明確であったため、DESの利用を断念することもあったといわれています。この度経済産業省が報告書を一般に公表し、国税当局に対する文書照会(平成22年2月22日)が行われた結果、本報告書の考え方により取り扱うことができるという確認がとられましたので、今回はその内容についてご案内いたします。

(1)DES(Debt Equity Swap)とは

DESとは、債権者側からは「債権者が債務者に対して有する債権を、債務者が発行する株式に振り替えること」、債務者側からは「債権者に対する債務(Debt)を資本金(Equity)に振り替える(Swap)こと」と定義されており、いわゆる「債務の株式化」と言われています。

(2) 報告書におけるDES対象債権の評価方法と交付された株式の税務上の評価額

私的整理ガイドライン等を利用した私的整理等における、DESの対象債権の時価について、報告書ではDESの対象となる債権の時価は、「合理的に見積もられた再生企業からの回収可能価額に基づき評価する」こととしています。
この回収可能額は、資産評定基準による資産評価の価額に基づいて作成した再生企業の実態貸借対照表の債務超過額に、債務処理に関する計画における損益見込み等を考慮して算定され、税務上特定の場合に債務免除額を計算する方法と同様の考え方になっています。
本報告書の考え方によると、DESの対象となる債権金額(額面)と債権の時価との差額については、債務者側はこの差額部分について債務消滅益を計上することとなる一方で、DESにより債務者から債権者へ交付される株式の評価額についても、この合理的に見積もられた回収可能額によって評価された債権の時価と同一としています。つまり、発行された株式の取得価額はこの債権の時価となりますので、債権者ではDESの対象となった債権の帳簿価額から、この株式の取得価額を控除した金額について債権の譲渡損として認識されることとなります。
 

(3)今後の活用場面に期待

平成18年度、平成21年度の税制改正において、DESによる現物出資によって生じた債務消滅益について期限切れ欠損金を適用できるようになったこと、民事再生に準ずる私的整理の事実の要件にDESが追加されたことなどにより、企業再生の場面においてDESが活用し易くなっています。一方で、企業再生に際してDESが行われた際の税務上の債権の時価を具体的に評価する方法が不明確であるという問題に対して、今回企業再生税制の対象となる場面でという比較的限定した評価の場面ではありますが、債権の時価の評価方法についての国税当局の確認が得られたこと、また、本報告書の方法で債権の時価を評価する場合には、比較的事務負担やコストがかからないと云われているため、今後DESを有効に活用できる場面が増えるのではないかと期待されます。