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TSKニュース&トピックス

平成30年8月第2号

民法改正~配偶者居住権の創設~

税理士 佐々木 孝成

昨年の5月26日に約120年ぶりに債権関係の改正が行われました。民法の改正は左記にとどまらず、さらに今年の6月に成人年齢の引き下げが約140年ぶりに行われ、相続関係の改正も7月6日に成立しました。この改正民法等は2020年までに随時施行されていくことになります。今回は相続関係の改正の中でも影響の大きい配偶者居住権を取り上げます。

1.配偶者居住権(民法第1028条)

配偶者居住権とは、配偶者が引き続き自宅に居住し続けることを認める法定権利をいいます。したがって、自宅の所有権について「居住権」と「居住権の負担がある所有権」の二つに区分されることになります。相続開始時に、配偶者が被相続人の建物に居住していた場合に、遺産分割又は遺言によって、その建物の全部を無償で使用及び収益する権利(配偶者居住権)を取得することができます。 自宅の完全な所有権を取得する場合に比べて、配偶者が取得する財産の評価額が少なくなることから、配偶者は自宅での居住を継続しながらその少なくなった分、多くの金融資産等を相続できる可能性があります。なお、存続期間は原則として配偶者が亡くなる時までになります。
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2.配偶者短期居住権(民法第1037条)

配偶者短期居住権は、相続開始時に配偶者が被相続人の建物に居住していた場合に、その居住建物所有権を相続等した者に対して、一定期間居住建物を無償で使用する権利を有するものです。なお、存続期間は次の区分に応じてそれぞれに定める日までです。 
 
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3.両者の違い

配偶者短期居住権は、配偶者居住権と異なり、相続分に含まれないことから配偶者が配偶者短期居住権によって受けた利益については、配偶者の具体的相続分からその価額を控除する必要がありません。したがって、配偶者短期居住権が消滅しても建物の所有者には経済的利益の移転がなく、課税関係は発生しないと考えられます。
また、配偶者居住権の民法上の財産的価値の算出方法は公表されておりますが、相続税評価はこれから財産評価基本通達等で定められると思われます。その他、婚姻期間が20年以上の被相続人が、配偶者に対し、自宅を遺贈又は贈与をしたときは、その遺贈又は贈与は、遺留分の対象から除外される改正も行われています。
 

<執筆者紹介>

佐々木 孝成 税理士 マネージャー

数多くの相続税申告や法人税申告にも携わり、組織再編を使った事業承継対策や相続対策による節税など、円滑な事業の承継に関するサポートを行っています。