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TSKニュース&トピックス

平成21年8月号

資産除去債務に関する会計基準とその影響について

公認会計士 小宮

1.導入経緯

平成22年4月1日以後開始する事業年度より、資産除去債務に関する会計基準が適用されます。なお、これ以前に開始する事業年度において、先行適用することもできます。今までの日本の会計慣行では、資産を除去(売却、解体、廃棄等)する際に生じる費用については、一部例外的に除去費用発生前に引当金等を計上するケースがあったものの、大半は実際に除去費用が発生(支出)する時点で費用認識されていました。一方で、国際的な会計基準では、従来から資産除去債務を計上する処理が確立されており、日本の会計基準と国際的な会計基準の同質化の観点からは、資産除去債務に関する会計基準を整備する必要性が近年急速に高まってきました。

2.資産除去債務の会計処理とは?

資産除去債務は、有形固定資産の取得時等において負債に計上するとともに、その金額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加算します。資産計上された資産除去債務に対応する金額については、減価償却を通じて、当該有形固定資産の耐用年数に亘り、費用配分されます。

3.資産除去債務の算定方法

資産除去債務は、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュフローを見積もり、それを適切な割引率により現在価値に引き直して算定します。この場合の割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率とするとされています。

4.貸借対照表の表示

資産除去債務は、原則として固定負債の区分に資産除去債務等の科目名で表示されます。そのうえで、1年以内に履行が見込まれるものについては、流動負債に計上します。

5.適用初年度の取扱い

適用初年度における既存資産に関連する資産除去債務について、過年度に帰属するものとして計算された金額については、原則として特別損失に計上します。

6.会計基準適用に係る影響

資産除去債務に関する会計基準の適用初年度については、従前未認識となっていた除去費用が特別損失として計上されることになりますので、例えば、有期契約の賃借店舗で事業を多店舗展開している企業や、撤去費用が多額にかかる設備を抱えているメーカーなど、業種等によっては、決算上の負の影響が大きくなる可能性があります。また、新店舗出店や新規設備投資の可否に関する判断基準において、資産除去債務を加味する考え方が一般化することで、結果として投資判断がより慎重になるのではないかと思われます。