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TSKニュース&トピックス

令和3年10月第2号

相続税の財産評価における総則6項適用事例紹介

個人資産税部門 税理士 吉田 紳一郎

相続税においては、被相続人がご逝去時に所有していた各種財産を「財産評価基本通達」に従って評価し、その財産総額を基に相続税額を計算することになります。財産評価基本通達には土地・建物・有価証券をはじめ、様々な財産の評価方法が記載されておりますが、今回のTSKニュースでは、その中でも財産評価基本通達6項の規定について解説します。

1. 財産評価基本通達6項について

財産評価基本通達6項には『この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。』と記載されています。つまり、財産評価基本通達に基づいて適法に評価した財産についても、著しく不適当と国税庁長官が判断した場合には、財産評価基本通達とは異なる評価方法により財産を評価することとなります。

2. 適用事例(節税目的で購入した不動産に対して財産評価基本通達6項の規定が適用された事例)

(1)概要
 ①平成21年に金融機関から多額の借入を行い、不動産2件を購入。購入後約3年で相続が発生。
 ②購入金額約14億円に対し、相続人は財産評価基本通達の定めに従いその不動産を約3億円として申告。
 ③また、借入金を債務控除として申告し、相続税額0円として申告を行った。
 ④相続発生の約9か月後、上記不動産の1つを約5億円(ほぼ購入金額と同額)で売却をした。
 ⑤課税庁より指摘を受け、裁判の結果、財産評価基本通達6項が適用され、課税庁が示した不動産鑑定評価額が財産評価額となった。

(2)財産評価基本通達に基づく評価(相続税評価額)とその他の時価との差額

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購入価格に比べ、相続税評価額が約24%、鑑定評価額と比べると約26%となっており、相続税評価により、かなり金額が低くなっているのがわかります。(相続税評価額は財産評価基本通達に則った適切な評価であり、評価自体は正当性のあるものとなります。)
また、不動産購入時の借入金を債務として計上することで、「財産-債務<基礎控除」となり、当初の申告では相続税額0円となっています。

3. まとめ

財産評価基本通達6項は以下のような場合に適用される可能性があります。

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ただし、上記事例もそうですが、相続税法及び財産評価基本通達の範囲内での節税対策は適法であり、生前の相続税対策は遺された家族のためにもとても重要なことです。しかしながら、節税対策を考える際には、財産評価基本通達6項の適用リスクを考えながら進めることも重要です。

 

執筆者紹介

個人資産税部門 税理士 吉田 紳一郎

相続税申告のほか、相続対策や事業承継など、個人資産税業務に従事しています。