中小企業における賃上げの実態と人材確保のための取り組み
FAS部門 刈田 浩次郎
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近年、中小企業のみならず大企業でも散見される問題である人手不足。今回はこの人手不足に対しての2025年版中小企業白書で取り上げられている内容をもとに中小企業における現状をご紹介いたします。
1.中小企業における現状
■ 業績が伴わなくても進む賃上げ
2025年版中小企業白書では、2024年度に賃上げを実施した中小企業のうち、実に4割以上が業績の改善を伴っていなかったことを示されております。背景としては人手不足がコロナ禍後も依然として社会全体としての課題として挙げられる中で、人材確保の競争が激化しており、人材の確保手段として業績の好転を待たずに賃上げを選択せざるを得ない構造が浮かび上がっています。 (2024年1月36.9%、2024年4~5月43.9%と+7%)
2.今後の対応策
しかし賃金の上昇だけでは頭打ちになり、営業利益の圧迫によって継続していくことが困難であることが考えられます。そうした中でも従業員の増加、従業員の定着が企業の成長にとって不可欠になるため、賃上げ以外の非金銭的施策を組み合わせる必要性が考えられます。同年の中小企業白書では有給休暇・育児休暇などの取得しやすい職場づくり、時間外労働の削減、福利厚生の充実などといった働きやすい職場づくりを行った企業では人材確保において10%以上の差が示されております。具体例としては、産休・育休制度の拡充、時間単位での有給休暇制度の導入、デジタル化による残業時間の削減、資格取得や社外研修への補助などが挙げられます。
これらの取り組みは単なる福利厚生の拡充にとどまらず、従業員のモチベーションやスキル向上につながり、結果的に生産性改善や離職率低下といった効果をもたらす可能性もあります。このように、賃上げと非金銭的施策を両輪として進めることが、中小企業にとって中長期的な利益確保と持続的な成長のカギになると考えられます。
弊事務所では中小企業支援の知見など活かし、事業や資金繰りなどに関する助言やサポートを行っております。ご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
<執筆者紹介>
FAS部門 刈田 浩次郎
一般事業会社を経て、税理士法人髙野総合会計事務所へ入所。
現在は事業再生業務のデューデリジェンス業務等に従事しています。