取引先リスクに備える与信管理の基礎
FAS部門 中小企業診断士 髙田 博道
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近年、倒産件数は増加傾向にあり、2024年度には11年ぶりに1万件を超えました(前年比+15.1%)。また休廃業件数は倒産件数の6倍以上にのぼっており、取引先リスクは高まっています。今回は「与信管理」に焦点を当て、現状と取引先管理の実践ポイントをご紹介します。
倒産件数推移
(出典:「東京商工リサーチ 全国企業倒産状況」よりTSK加工)
1.焦げ付きのリスク
■ 焦げ付きとは
債権が回収できなくなることを指します。
■ もたらす影響
焦げ付きは損益・資金繰りに直接的な悪影響を及ぼします。加えて、回収不能額が多額となった場合には、取引先から自社の資金繰りに対する懸念が生じ、信用低下や取引縮小といった二次的リスクが生じ得ます。
2.債権回収が滞る原因
3.取引先を見極める視点
事業内容や取引姿勢に不自然さがないか
売掛金が急増していないか
メーンバンクの変更や多行借入など金融面の異常はないか など
・特に留意すべきは、焦げ付きは新規取引よりも継続取引で多く発生する点です。長年の取引で警戒心が薄れ、危機感を持たないまま取引を続けることがリスクの温床となります。
・与信管理は「静的」な決算データ分析にとどまらず、営業現場の感覚や日常の取引情報を取り込んだ「動的管理」が不可欠です。また、リスクをゼロにはできないため、焦げ付き発生時に 被害を限定し、早期回収につなげる体制 を備えておくことが重要です。
まとめ
与信管理は「営業」と「管理」が連携し、経営の持続性を守るための仕組みです。単なるリスク回避ではなく、取引を安心して拡大できる「攻防一体の経営基盤」として位置付けることが求められます。
執筆者紹介
FAS部門 中小企業診断士 髙田 博道
一般事業会社、大手信用調査会社を経て、税理士法人髙野総合会計事務所へ入所。 現在は事業再生業務に従事しています。