新リース会計基準(借手側のフリーレントの税務処理)
法人部門 税理士 上岡 弘樹
-
outline
-
新リース会計基準に関するテーマを継続して取り上げてきましたが、今回のTSKニュースでもその続編として、無償等賃貸期間(フリーレント)を含むリース取引の借手側の税務上の取扱いについてご紹介いたします。
1.フリーレントとは
フリーレントとは、賃貸借契約における一定期間の賃料支払義務の免除または大幅に割引する旨の特約を指します。 借手側にとっては初期負担の軽減を図ることが可能となり、貸手側においては空室リスクの軽減や早期の入居を促進するための施策として位置付けられております。
2.フリーレントを含むリース取引の借手側の会計処理
フリーレントを含むリース取引の借手側の会計処理については、①実際に支払いが生じた期間で費用計上する方法と、②賃貸料総額を賃貸期間にわたって費用計上する方法があり、新リース会計基準を適用する場合には②の方法によって処理します。
例)リース期間:24ヶ月、フリーレント(無償)
期間:2ヶ月、月額賃貸料:132,000円、リース料総額:2,904,000円
①実際に支払いが生じた期間で費用計上する方法
②賃料総額を賃貸期間にわたって費用計上する方法
3.これまでの法人税法上の取り扱い
これまで、フリーレントを含む賃貸借取引の借り手側の取り扱いについては法人税法上明確にされておらず、法人税法第53条においては、原則として債務の確定した部分の金額のみ損金算入されると規定されていることから、実務上は①の処理方法が多く選ばれていました。
4.新設された通達上の取扱い
法人税法基本通達12の5-3-2(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)において、フリーレント期間が定められた契約に基づき支払う金額を賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に、各事業年度中に支払われるべきこととなる金額を、当該各事業年度の損金の額に算入するものとされました。すなわち、②の方法で費用計上した金額について、損金算入することが可能となります。ただし、この取り扱いは損金経理をすることが要件とされており、①の方法で会計処理を行った場合は該当しませんので、ご留意ください。また、フリーレントによる支払い義務の免除額等が多額な場合や、フリーレント期間が長すぎる場合などの課税上弊害があるものも対象から除外されます。
<執筆者紹介>
法人部門 税理士 上岡 弘樹
上場企業の関係会社及び中小企業を中心に決算業務、申告書の作成、税務相談等の業務に従事。お客様のニーズに少しでもお応えできるように、日々精進してまいります。
Column
給与課税が対象外となる社員旅行の要件の1つに従業員の参加割合50%以上であることが、個別通達に定められています。この個別通達の給与課税が対象外になる要件に沿って、社員旅行が企画されることが一般的です。ところが、社員旅行の給与課税の要否に関するタックスアンサー(№2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行、国税庁HP)に2024年12月に新たにQ&Aが追加されました。このQ&Aでは、個別通達の内容とは違い参加割合50%未満であっても、「社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行であり、従業員が受ける経済的利益も少額と認められること」を理由に給与課税不要とする例示が示されました。昨今の事情を踏まえての緩和策としての公表と考えられますが、法律等の改正を伴うものでないにもかかわらず抽象的であり、使いにくいものになっています。折角の緩和であるにもかかわらず、実際は、例示そのままの社員旅行か今後も従前どおり個別通達の要件に沿う社員旅行が企画されることが想定されます。弾力的な取扱いが示されることはありがたいことですが、実態に即したものを示して欲してほしいものです。